チベット-ヤルツァンポ川-ダムの秘密

巡礼者を満載したヤルツァンポ川の渡し舟
巡礼者を満載したヤルツァンポ川の渡し舟(2003年)

ヤルツァンポ川は、カイラス聖山の麓から流れ出る、四大河川のひとつです。

川は、チベット高原を西から東に、1300kmもの距離を悠々と流れて行きます。そして突如、南に向きを変えヒマラヤ山脈を切り裂き、大屈曲部を南進しガンジス川と合流、ベンガル湾に至ります。

チベット最古の僧院サムィエ寺には、この大河を大きな渡し舟で渡り、参詣します。巡礼者たちを乗せた船は、ちいさな船外機ひとつで静かにすすみ、1時間ほどかけて対岸に至ります。写真は、渡し舟が対岸を出発するところです。

チベット族にとってヤルツァンポ川は信仰、生活ともに重要なものです。しかし、中国によるダム建設は止まらず、その影響は北インド、バングラデシュにも及びます。渡辺一技さんの「消され行くチベット」に、そのダムの事が書かれていました。

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『消されゆくチベット』 (集英社新書) 渡辺 一枝 (著)

・・・各地で水力発電所は建設されているが、2011年に行ってきたコンボでも、ヤルツァンポ上流の大きなダムが建設されるところで、住民は既に他の地へ移住させられていた。ダム建設のために地域の人たちが聖山と崇めてきた山がひとつ、そっくり切り崩されていた。工事現場には「武警水電部隊」と記した立ち入り禁止の柵が設けられていた。水力発電所の工事は中国人民武装警察隊という軍隊に等しい組織が管轄しているのだ。

「崩された山はソンツェンガンポ王の縁の山だったから、何かが埋蔵されていたか天然資源があるのだろう」と、チベット人は言う。・・・

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